1970年頃(ラジオ少年だった頃)、「初歩のラジオ」誌などを見て、科学教材社さんの キットを真似て 0-V-2 を作りました。当時は作品が動けば分解し、シャーシその他部 品などを流用して次の作品を作っていましたので、当時の作品は残っていません。

月日は流れ、2000年代になって 0-V-2 を計2台作りました。電源トランスは高価 なので、トランスレスとしました。そのうち1台は、再生検波管 6AU6 の負荷に贅沢 にも 100H のチョークコイルを使いました。

これらトランスレス式の2台の性能は昔の科学教材社のキット(電源トランス付)と 比べてどれくらいかわかりません。そこで、科学教材社のキットを真似た 0-V-2 を作 ってみました。真似たのは、「ラジオ製作ABC」1967年版の記事の 0-V-2 です。( 年代によって回路が若干簡略化され、雑誌に製作記を書いた人によって配線の様子がか なり異なります。)

真似た点は以下です。①単連バリコンはしっかりしたアルプスの B-15 ではなく、見 た目が科学教材社のキットに使ってあったのと似ている東和蓄電器(Sister)製の安 っぽいのを使いました。②前面パネルの両脇の補強版を台形にしました。(三角形の より格好がいいです。)③B電源の平滑用ケミコンはもっと大きなのにしたかった のですが、10μF×2(2009年秋時点でも科学教材社で買えた!)で我慢しました。原 典のはさらに 2μFも入っていますが。)④ヒューズホルダは当時の透明カバーが付い たタイプにしました。⑤部品配置と内部の配線も真似ました。⑥真空管とコイルのソ ケットも、タイト製などではなく、それぞれモールドタイプとベークにしました。⑦ 再生調整のボリュームは、今では珍しいスイッチ付き 10kΩBカーブを使いました。⑧ イヤホンジャックは今では見かけない当時のタイプをジャンク箱から見つけて使いま した。

一方、真似しなかったのは以下の点です。(1)スプレッドバリコンとして、今では入手 困難な再生用豆コンの羽をむしって使うのはもったいなかったので、OM からいただい たミゼットバリコンを使いました。(2)スピーカは本来 9cm ですが、パソコン用スピー カをバラして取り出した 77mm のにしました。スピーカーの下部をシャーシに沈めると 背が低くなって格好がいいのですが、工作が大変なのでしませんでした。(3)おまけに、 本物のシャーシは深さが 40mm でしたが、55mm の深いシャーシしか手に入らなかった ので、余計にスピーカの位置が上になっています。(4)スピーカの前の穴は、原典では 横長の穴がいくつか開いているだけですが、これは加工しにくいのと、穴の面積が少な すぎると思い、黒のパンチングメタルをはめました。もっとも、「ラジオ製作ABC」 の1970年版の表紙の絵には、パンチングメタル式の 0-V-2 が載っています。(5)抵抗、 コンデンサは近年物を使いました。

で、製作して配線をチェックし、電源を入れたら、一発で一応鳴りました。しかし、 以下の問題がありました。

①再生を強くすると、ギ、ギ、ギ、というような音のブロッキング発振(?)が発生。 グリッドリークのC、Rの値を変えても変化なし。検波管のプレートのフィルタの 100pF にCをパラに入れても変化なし。結局、検波管の近くでB電源からグランドへ 0.01μFをつないだら止まりました。

②再生を強くするとハウリングが発生。スピーカーがシャーシに固定してあるせいか と思い、前面パネルとのあいだに厚紙を挟んでみましたが効果なし。そこで、バリコ ンの留めネジのスペーサを、弾力性がある(といってもゴムより硬い)プラスチック製 に取り替えたら軽減しました。さらに、6AU6 を交換したら完全に止まりました。

③700kHz 以下くらいの感度が悪い。NHK の第一放送は、数mのコードを室内に張った アンテナをつなぎ、再生を一杯かけてもノイズまじりでした。前作、前々作のトラン スレスの2台も似たようなものでしたので、そのままとすることにしました。コイル がローインピーダンス型だからしかたないのかも。(でも、感度悪すぎ。)

ところで、いくつかの製作記事では、回路図と実態配線図で、出力トランスの一時側 をB電源の 3kΩ の後につなぐか前につなぐかが異なります。どちらでも鳴りますが、 1970年版の「ラジオ製作ABC」では実態図も回路図も、3kΩを出た後につなぐようにな っていますので、そうしました。

自作のトランスレス式との比較ですが、今回のはトランスレス方式の2台より再生が 若干スムーズにかかります。感度は同じようなものです。しかし、科学教材社のキット のは、再生調整で音量調整を兼ねています(音量調整用ボリュームがない)ので、選 択度を稼ぐために再生を効かせますと音量が大きくなりすぎることがあり、再生調整 とは別に音量調整のボリュームが欲しいです。そうすれば、再生をうんと効かせて混 信は排除し、音量は適切なレベルまで下げる、という受信のしかたができますので。 ハム雑音は、B電源がお粗末な割には少ないです。ただし、ハムは再生の効かせ方に 関係なく鳴っていますので、トランスレス式の自作機である程度強い電波を受信して 再生を効かせてハムが減った状態よりは多いかもしれません。