例によって100円ショップのCDケースをシャーシの代わりにして作ったラジオ です。今回は高一で、真空管は 3AU6-3AU6-4M-P12 という、ありふれてい ながら省みられないテレビ球です。ACアダプタはヒーター点灯用です。任天 堂のゲーム機用の 10V 850mA の両波製流用ダイオードをショットキータイプ に交換して、なんとか 11V が出ました。B電源は倍電圧整流し、パワーMOS FET×1石によるリップルフィルタを付けました。

「高一ラジオでは、2本のコイルのうちの1本はシャーシ上に、もう1本は シャーシ内部に」という定石を守らなかった(シャーシが薄くて入らない) せいか、再生の強さに関係なく、700kHz以下で発振しました。高周波増幅段 のゲインを下げたり、アンテナコイルと高周波増幅の 3AU6 にステンレス製 のマグをかぶせたり、3AU6×2本だけにシールドケースをかぶせたりしたので すが、ダメでした。700kHz以上は前項の並四より高感度(というか、大音量) で受信できますが、分離度はあまりよくありません。とはいっても、送信所 が近いラジオ日本から弱い文化放送への混信を、AS 端子にアンテナをつな いだ状態でも、再生を効かせることによって排除できます。並四では無理で した。

その後、あちこちいじりましたら、なんとかおさまりました。
(1) 検波コイルのP端子からG-Eの巻き線のG側に沿って2~3回巻いて あって、他端はどこにもつないでない巻き線に注目しました。こんな巻き 線があるとは、今回のラジオを作るまで知りませんでした。改めてラ ジオ 技術 2000年12月号や 2001年 1月号の高一ラジオの製作記事を見て みまし たら、その巻き線が一時期の TRIO の高一コイルに付いている回 路図とな っています。
その巻き線をガラ巻きの5~6回に増やし、G端子側の巻き線に半分くらい 重ねたら、700kHz以下の発振が止まりました! とくに感度が落ち た様子も ありません。

(2)しかし、トラッキング調整(トリマーでは追いつかず、検波コイルのG- E間の巻き線を2回減らしてトリマーを調整)をしたら、高い周波数で発振 するようになってしまいました。そこで、高周波増幅段のカソードのバ イパ スコンデンサを取り除き、スクリーングリッドの抵抗を大きくしたら 、一応 止まっています。でも、トラッキング(トリマー)調整を完全にす ると発振 します。

今回はシャープカットオフで 6BD6 や 6D6 より高gmの 3AU6 を高周波 増 幅段に使い、再生検波段も 6C6 より高gmの 3AU6 を使いましたので 、勘 弁してやってください。リモートカットオフの球なら、カソードの電 圧を調 整して増幅度を調節する定番の回路にして、トラッキングは完全に しておい て、ゲインの調節で逃げられますが、今回のはアンテナコイルの 一次側に入 れたボリュームで感度調節していますので、ゲイン自体は変え られませんの で。

これらの調整後は、一段と感度・分離がよくなりました。ラジオ日本に隠れ てしまっていた日本放送が、混信はあるものの聞こえるようになりましたし、 文化放送は混信なしです。並四より高一は各段に高性能です。

その後、「発振するのは、通常の感度調整方法である、バイアス電圧を調整 するゲイン調整回路を付けなかったため、3AU6 のゲインはいつも最大の状態 となっていて、アンテナコイルの一次側のボリュームで感度調節をするとい う方式が悪いだけではないかと思い至りました。 つまり、通常の「バイアス 電圧を調整することによって増幅度を変える回路にすれば、「ゲイン調整の ボリュームを右に回せば発振、戻せば発振が止まる」というごく普通の動作 になると思いました。そうなれば、現状の部品配置でも全然問題ないではな いかと。そこで、試してみました。3AU6 はシャープカットオフとはいえ、 6BA6 や 6BD6 よりは狭い範囲ながら、バイアス電圧を変えることによって感 度調整もできるはずだと思い、通常は GND-10kΩの VR-20kΩ-30kΩ-B電 源 という回路が多いですが、VR に 5kΩを使い、GND-5kΩのVR-22kΩ-33 kΩ-B電源 としてみました。

その結果、大体 1MHz 以下ではゲイン最大にしても発振せず、それ以上の周 波数ではゲインをかなり上げたときだけ発振するようになりました。トラッ キング調整もしましたので、感度・分離度は一段と良くなり、ラジオ日本と ニッポン放送は混信せず、NHK 第一放送もかなり大きな音で鳴るようになり ました。高一ラジオなら、電波の弱い地域でも実用になるのではないかと思 います。

問題は、
(1)シャープカットオフなので、VR の7時から12時くらいのあいだではカット オフとなる。→これは、VR を 3kΩにし、GND と 5kΩの間に2.2kΩを入れれ ば改善するはず。
(2)周波数の低い方と高い方でゲインがかなり異なる。→当初、周波数が低い 方で発振した際に増やした検波コイルの P端子から G巻線への結合コイルの 巻数を3回にまで減らしましたが、変化は感じられませんでした。アン テナ コイルにハイインピーダンスタイプを使えば改善するのではないかと 思いま す。
(3)再生を強めるに従ってハム音が大きくなります。不思議なことに、放送を 受信している状態では、ハム音はかなり小さいです。モジュレーションハム の逆です。B電圧をオシロで見てみましたが、リップルは 100mV未満です。 (Power MOS FET によるリップルフィルタがよく効いています。) ヒーター の片方や、AC 100V のラインの一方や両方を 0.1uF でグラン ドにつないで も、変化はありませんでした。原因不明です。ということで、ずいぶん良く なりましたが、まだ改善の余地がありそうです。
The 3AU6 for FR amplifier, the 3AU6 for regenerative detector and the 4M-P12 for the power amplifier are used. The wall wart (AC adapter) is to light the heaters.

Coils for TRF radios must be shielded but I did not do so. As a result, the detector stage oscillates at about 700kHz and below. I was able to stop the oscillation by increasing the turns of the winding (coupling?) connected to the "P" terminal of the coil and wound close to the G-E winding's "G" side. Somehow, the other end is not connected to any terminal.

Then, I noticed that the tracking cannot be adjusted by trimmer capacitor only. So, I removed two turns of the G-E winding of the detector coil and adjusted the trimmer. Then, the radio started to oacillate at about 1.2MHz and up. So, I reduced the gain of the RF amplifier by removing the bypass capactor and lower the G2 voltage.

It still oscillates when the tracking is precisely adjusted. So, I allowed slight tracking error. If I used a remote cut-off type tube for the RF amplifier, I would be able to use a regular gain control circuit that adjusts cathode voltage of the RF amplifier and to adjust the gain without the tracking error. Because the 3AU6 is sharp cut-off type, I had to use a potentiometer for the A-E winding of the antena coil to adjust the sensitivity. After the adjustments, the much sensitivity (volume) is better than the regenerative radios in the previous pictures' and the selectivity is also much better.